リングフェンシングとは、居住用賃貸物件で生じた損失を、給与やその他の所得にかかる税額を減らすために使えないという意味です。その損失はいったん留保され、翌年以降へ繰り越されます。ここでは、このルールの仕組みと申告への影響を解説します。

リングフェンシングの意味

リングフェンシングは、居住用賃貸活動の周りに柵を設けるようなものです。そこで発生した損失は、その柵の内側に留めなければなりません。給与、事業利益、投資収益など、柵の外から生じる所得にかかる税金を減らすために外へ持ち出すことはできません。

賃貸物件は、控除可能な費用(地方税、保険料、利息、修繕費、管理手数料、動産の減価償却費)が賃料収入を上回ると損失になります。ルール変更前は、その損失を全体の課税所得の減額に使うことができ、これが「ネガティブ・ギアリング」と呼ばれる戦略の背景でした。リングフェンシングにより、居住用不動産ではそれができなくなりました。

損失が消えるわけではありません。損失は隔離され、翌年以降へ繰り越され、将来の賃貸所得と相殺されるのを待つ形になります。つまり、メリットが否認されるのではなく先送りされるということです。賃貸活動が黒字になれば最終的には損失を使えますが、その間、日中の本業からの所得とは相殺できません。この一点の変更が、居住用賃貸物件を保有する際の採算計算を大きく変えるため、初めての確定申告時に驚かれる投資家が多いのです。

リングフェンシングの意味

給与と損失を相殺できない理由

このルールで実務上いちばん重要で、多くの方がつまずきやすいのがこの点です。給与を得ている方が、赤字の賃貸物件も所有しているとします。直感的には、その損失で給与にかかる税金が減り、還付が生じると考えるかもしれません。しかしリングフェンシングの下では、通常それはできません。

所得リングフェンシング前現在
給与 $80,000$80,000に課税$80,000に課税
賃貸損失 $10,000相殺され、$70,000に課税リングフェンシングされ、繰越し
課税所得$70,000$80,000

「以前」の世界では、$10,000の損失によって給与にかかる税金が減りました。現在は、給与はそのまま全額課税され、$10,000の賃貸損失は将来、賃貸所得と相殺するために別途留保されます。以前は見込めた還付が発生しないため、多くの大家さまが会計士から初めて「リングフェンシング」という言葉を聞くタイミングになります。

この政策の背景には、居住用不動産の損失を、関係のない所得にかかる税金の減額に使わせないという考え方があります。その是非はともかく、実務上の結論は明確です。赤字運用の居住用賃貸物件から税金の還付が出る前提で予算を組まないでください。

ポートフォリオ単位と物件ごとの取扱い

複数の賃貸物件を所有している場合、どこに柵を引くかが重要です。リングフェンシングの適用方法には2つあり、通常の初期設定は多くの投資家にとって有利です。

  • ポートフォリオ単位(通常の初期設定):所有する居住用賃貸物件を1つのまとまりとして扱います。同じ年に、ある物件の損失を別の物件の利益と相殺でき、ポートフォリオ全体の損失だけがリングフェンシングされ、翌年以降へ繰り越されます。
  • 物件ごとの取扱い:各物件を個別に区分するため、ある物件の損失を別の物件の利益と相殺できません。一般的には不利で、特定の状況で適用されます。

多くの大家さまにとっては、ポートフォリオ単位の方が望ましい結果になります。赤字の物件と黒字の物件を同一年内で相殺でき、繰り越す必要のある金額を減らせるためです。適切な単位を選び、一貫して適用することは、複数物件の申告を正しく行ううえで重要です。複数の賃貸物件を保有している場合は、ご自身の状況に本当に合った取扱いで申告しているか確認する価値があります。

損失の繰越し

リングフェンシングされた損失は、切り捨てられるものではなく、将来のために積み立てておく控除枠です。賃貸が赤字になる年ごとに、その損失は繰越残高に加算されます。賃貸物件が黒字になった年には、累積した損失を使って、その利益に課税される前に相殺します。

つまり、損失は最終的に役割を果たしますが、それを使える対応する賃貸所得が生じるまで待つことになります。時間の経過とともに賃料が上がったり住宅ローンが減ったりすると、賃貸物件が赤字から黒字へ転じることがあり、その時点で繰越損失が効いてきて、新たな利益を守ります。

  • 賃貸が赤字の間、損失は年ごとに累積します
  • 損失は将来の賃貸所得と相殺され、給与所得や事業所得とは相殺されません
  • 残高は使い切るまでポートフォリオに引き継がれます

実務上もっとも重要なのは記録管理です。繰越損失は正確に記録し、次の申告へ正しく引き継ぐ必要があります。そうしないと、正当に使えるはずの損失を、帳簿に適切に残していなかったという理由だけで活用できなくなるおそれがあります。これは、良い賃貸申告が毎年きちんと行っている目立たない重要作業のひとつです。これは一般的な情報です。ご自身の状況については当社へご確認いただくか、IRD(ニュージーランド内国歳入庁)の ird.govt.nz をご確認ください。

対象外となるものと例外

リングフェンシングは、主に居住用賃貸不動産を対象としています。そのため、いくつかのものは柵の外にあります。境界を理解しておくことで、本来適用されない場面でこのルールを誤って適用することを避けられます。

一般的にリングフェンシングの対象にならないものは次のとおりです。

  • ご自宅。そもそも賃貸物件ではありません
  • 商業用不動産。居住用のルールの対象外です
  • ブライトライン・テストの対象となる土地、または一定の場合に収益勘定で保有される土地。別の取扱いが適用されます
  • 一定の混合利用物件や事業用施設など、状況によってはより広い事業の一部である不動産

居住用と非居住用の境界は、見た目ほど明確でないことがあります。特に、混合利用物件、短期滞在用の宿泊施設、または独立した賃貸ユニット付きの自宅では注意が必要です。こうしたケースこそ、ルールが適用される、または適用されないと決めつけることで、誤った申告につながりやすい場面です。

安全な進め方は、申告前に、ご自身の特定の物件がどの区分に該当するか確認することです。ご自身の物件が柵のどちら側にあるのか不明な場合は、当社に確認されることをおすすめします。当社の賃貸不動産と投資家向け税務のサービスページでは、より広い全体像を説明しています。

簡単な計算例

簡単な計算例

数字で見ると分かりやすくなります。Arohaさんは$90,000の給与を得ており、居住用賃貸物件を1つ所有しているとします。その年の賃料収入は$24,000でしたが、地方税、保険料、利息、修繕費、動産の減価償却費を含めると、運営費用は$30,000でした。

項目金額
賃貸収入$24,000
賃貸費用$30,000
賃貸損失$6,000

この$6,000の損失はリングフェンシングされます。Arohaさんは、その年に相殺を受けられず、$90,000の給与全額に対して引き続き課税されます。そして$6,000は翌年以降へ繰り越されます。

次に、数年後を見てみましょう。賃料が上がり、住宅ローン残高も減ったため、賃貸物件が$4,000の利益を出しました。Arohaさんの繰越損失$6,000が適用され、$4,000の利益を消し込みます(その年の賃貸利益には税金がかかりません)。そして$2,000の損失が引き続き翌年へ繰り越されます。損失は役割を果たしましたが、それは後の年で、賃貸所得に対してのみでした。

これがリングフェンシングの要点です。今の損失を蓄積し、後の賃貸利益と相殺する一方で、給与とは決して相殺しません。当社の単独の計算例ページでは、より詳しい例を説明しています。

このページは一般的な情報のみを提供するものであり、個別の税務アドバイスではありません。ご状況によって取扱いは異なる場合がありますので、無料レビューをご予約のうえご相談ください。分かりやすく言うと、居住用賃貸物件の損失で給与にかかる税金を減らすことはできません。損失はいったん留保され、将来の賃貸利益と相殺するために繰り越されるため、ネガティブ・ギアリングによる還付を当てにしないでください。

これは一般情報であり、個別の税務助言ではありません。詳しくは 免責事項全文.